ハラスメント問題

1、介護事業所におけるハラスメント問題の傾向

介護事業所の特徴として、職員が女性中心であることが挙げられます。
介護労働安定センターが発表している資料によると、平成29年度の介護労働者全体に占める女性の割合は79.2%であり、圧倒的に女性が多いことが分かります。

それだけに、介護事業所を運営する際に気を付けなければいけないのは、ハラスメント問題です。

とりわけ、介護事業所内におけるハラスメント問題については、利用者から職員に対するセクハラやパワハラなどの比率が多いことが特徴です。

具体的には、セクハラの事例としては、介助中に体を執拗に触られる、キスを強要される、パワハラの事例としては、引っかかれる、殴る蹴るの暴行をうけるなどのケースが多発しています。

2、利用者から職員へのハラスメントから生じる様々なリスク

こういったケースは、運営する側が適切な対応を講じなければ、職員が職場に嫌悪感を抱いて退職してしまったり、

場合によっては精神的なショックから病気になってしまう場合もあります。
職員の退職や病気による休職は、貴重な人材が減ってしまうだけでなく、場合によっては事業所や運営するグループ全体の評判にもかかわります。

さらに、気を付けなければならないのは、介護事業所側が、利用者の被害にあった職員から、慰謝料請求などの損害賠償請求を受けるリスクがある点です。
介護事業主は、職員に対して「働きやすい良好な職場環境を維持する義務」(安全配慮義務)を負っているため、職員の安全を脅かす問題を放置してしまうとこれらの義務に違反しているといわれる可能性があるのです。

 

3、利用者からのハラスメントリスクに備えるためにはどうすればよいか?

したがって、介護事業主は、普段から職員がハラスメント被害にあわないように、また、もしそういった被害が生じた場合にも適切な対応をできるよう事前に準備をしておく必要があります。
では、どのような対策をとることが大切か、ここでは重要と考えるポイントを解説します。

まずは、入所時の段階で、利用者やその家族へ注意喚起をしておくことが重要です。
具体的には、契約時や入所する前の面談の場などで、契約内容や施設利用の方法を説明することに加えて、万が一、職員へ危害を加えることがあった場合にはサービス利用の拒否や、退所処分があることを含めて説明しておくことが重要です。

また、専門家の協力の下で、事前にきちんとした利用規約を整備しておくことも必須となります。
また、利用者がそういった兆候のある言動を起こした場合に、職員間で情報共有をして注意を促しておくこと、また、今後連携してその利用者の対応にあたることができるように、言動について記録し報告する体制を整備しておくことが必要です。

 

そして、この記録や報告は、口頭ではなく、報告書などの書面やメールによって行うことが重要です。

書面やメールであれば、連絡の行き違いも防ぐことが出来ますし、もし万が一、利用者との間でトラブルが生じた場合にも、それ自体が客観的な証拠となります。

また、介護事業所側が利用者に対してきちんと注意を行う、場合によっては利用者の家族を呼び出して面談を行い、家族に対しても情報を共有し注意喚起をすることも大切です。
この場合も、やはり注意文書や連絡文書などの書面の形で行うことがとても重要です。

口頭よりも書面の方がより重みをもって受け取めてもらえますし、既に述べたように、もし万が一トラブルが生じた場合にもそれらが事業所を守る資料になり得るからです。

さらに、悪質なハラスメントのケースや繰り返し同じ問題を起こす利用者に対しては、サービスの利用拒否や退所処分を含めて、介護事業所側が毅然とした対応をとることが大切です。
利用者との契約を解除するかどうかは、介護事業主にとって非常に悩ましいところですが、このような毅然とした対応が、職員や他の利用者を守るだけでなく、ひいては介護事業所の運営自体も守ることにつながります。