就業規則

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、労基法上就業規則を作成しなければならない義務があります。

以下では、介護事業主における就業規則(ここでは、賃金規程を含めた広い意味での「就業規則」について述べます。)のチェックポイントをいくつかご紹介します。

1、職員のカテゴライズ ~就業規則に存在しない職員が働いていませんか?~

介護の現場では、正職員のみならず、管理者、常勤訪問介護員、非常勤訪問介護員、登録型訪問介護員等様々なカテゴリーの職員がみられることが多いです。

「就業規則に存在しない類型の職員が実際にはいる」等のように、就業規則の規定と実態との間に乖離がみられる場合、不測の事態(例:正職員のみを対象とする規定がパート職員に適用される等)を招くおそれもありますので、就業規則上、労働時間及び有期・無期の観点から職員を類型化した上で適用関係の整理がなされているかという点は重要なチェックポイントです。

2、介護の現場を見据えた服務規律 ~職場に必要なルール、抜け落ちていませんか?~

就業規則の服務規律には、当該法人の構成員として職員が遵守すべき事項が記載されます。当該事業の介護の現場において遵守すべき事項や理念がきちんと記載されているかという観点で服務規律を整備し、トラブルの未然防止を図ることが肝要です。

例えば、訪問介護サービスにおいて職員が自己判断により直行直帰を行うことにより労働時間管理が曖昧になることを防ぐためには、「自宅から利用者宅に直接出向く場合又はサービス終了後自宅へ直帰する場合には、法人からの指示に基づく所要の業務連絡を行わなければならない。」といった規定を置くことが考えられます。

緊急時以外に職責や利用サービスを超えた処置を行うことにより介護事故やトラブルが生じることを防止するためには、「緊急処置が必要な場合を除き、サービス提供にあたって法人から指示された業務の範囲を逸脱する行為をしてはならない。」という規定を置くことが有効です。

これらはあくまで一例ですが、「当該職場に必要なルールが盛り込まれているか」という観点から服務規律をチェックし、「単なる雛形のベタ打ち」ではなく「職場に適した服務規律」を設けることが重要です。

3、懲戒の規定 ~包括規定は必須~

使用者が職員に対して懲戒処分を行うためには、必ず就業規則に懲戒処分の種類及び事由を記載する必要があります。たとえ虐待により利用者を負傷させた職員がいたとしても、就業規則上の根拠がなければ懲戒処分を行うことはできません。

懲戒事由を定める際には、具体的な禁止規範を列挙するのみならず、必ず「その他前各号に準ずる行為があったとき」と包括規定を置くようにしましょう。列挙した具体的な禁止規範に直接は該当しないものの類似する程度の不都合な行為があった際には、この包括規定をもって懲戒処分を行える場合があります。
逆に、このような包括規定がなければ、直接該当する懲戒事由がない限り懲戒処分を行えないという事態が生じ得ます。

4、残業代の定め ~その定額払い、就業規則に明記されていますか?~

残業代を手当による定額払いを行っている法人の場合、「その手当は本当に割増賃金として払われているのか」を検証する必要があります。仮に定額払いの規定あるいは運用に不備があった場合、残業代請求の訴訟となった際に、当該手当が残業代の定額払いがあったものとはみなされず、当該手当を基礎単価に含めた上で残業代支払を命ぜられるリスクが高まります。

手当による残業代の定額払いを行う場合には、当該手当は名称・実態とも割増賃金に充当するものといえるのか、当該手当は何時間相当分の手当なのか、当該手当はどの法定割増賃金に充当するものなのか(法定外時間外労働、休日労働、深夜割増)が明確になっているかを確認する必要があります。また、運用実態として時間管理をきちんと行い、定額払分以上の残業が発生した際には、この差額支払いを都度行う必要があります。